終章 月の無い空に世界蛇は哭く 序詞“緋天の開戦” #2

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そして、奥の上座に用意された豪華な椅子に座るのは、王女専用の変わった姫甲冑に身を包んだパリキスである。 「それでは明朝に作戦を開始する。皆の者、粉骨砕身で事にあたるがよい」 パリキスの号令に全員、敬礼で答える。 ぞろぞろと退室するなか、ガルンのマントをスピカが引く。 「……? 何だスピカ?」 「ほい」 スピカは無愛想に手にした、でかい袋を渡す。 ガルンは不思議がりながらも中を見た。 中には王宮近衛騎士団の正装一式が入っている。 「どう言う事だスピカ?」 「姫様からの……差し入れ。現役復帰。これでガルンは、メルテシオンでは第三位種権限を……得た事になる。何かあったら思うように動けって……事」 第三位種権限はパリキス、今任務総括のマグリネスに続く権限である。 持っているのはアルダークと王宮近衛騎士だけだ。 ガルンは呆れ気味に微笑した。 どうやら、ガルン達の動きは予測されていたらしい。 これならば作戦無視では無く、独自判断に基づく戦略作戦はありになる。 ガルンはチラリとパリキスに目をやると、ニッコリ微笑み、胸元で小さく手を振る姿が映った。 ガルンも釣られて手を上げる。 「……」 それから三秒程して、微妙にニヤつくスピカに気がついた。image=366716366.jpg
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