120人が本棚に入れています
本棚に追加
精霊の眼に切り替えて納得する。
存在が変質している。
聖側に。
今までに見たパリキスやアルダークのようなものとは、根本的な質が違う。
これはグラハトと同じ。いや、真逆だと感じる。
人の身で別存在にシフトした人間だと。
「姫の御身は我等が護り通す。貴公は存分にその力を発揮したまえ」
マグリネスの言葉に、ガルンは周りを警戒しながら無言で頷く。
目の前の王宮近衛騎士の存在の光には覚えがある。
第三王女と立ち会ったさいに木陰で感じた光だ。
それを遮るようにアルダークが一歩前に出る。
「貴様の憤りは分からなくは無い。貴様の正義は貴様だけのモノであり、我が正義は我だけのモノだからだ」
アルダークの答えに、ガルンのこめかみに青筋が走る。
「それが、グラハトを殺した謝罪のつもりか?」
「謝罪? 何故、謝罪が必要だ。我等は我等の正義に従い事をなしたまでだ。謝罪をする気など毛頭ない。では、あの者の犯した罪はどうなる? 貴様が奴の仇を討ちたいように、奴に殺された人間の縁者は等しく復讐心を持っているぞ。その者たちに、貴様は奴の代わりに謝罪して回るのか?」
ガルンは沈黙した。
確かにグラハトは昔、闇主側で戦ったと言っていた事を思い出す。
その戦いがどれだけ苛酷で悲惨だったかは謎である。
その時に、どれだけの人間が死んだかも分からない。
アルダークの言うように、グラハトを親や恋人の仇と付け狙う輩も存在したのかも知れないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!