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「人が生きる以上、人が生きている数だけの正義があり、憎しみがあり、信じる神がいる。それがこの神誓王国メルテシオンの分かりやすい姿だ。この国には個人個人で崇める神がおり、正義があり秩序がある。それを誰も咎めはしない。我等が裁くのは思想や理念では無く、その思想や理念が導き出した罪であり、結果だ。犯した罪は断罪されねばならぬ。例えそれが誰であろうとな」
アルダークの威圧的なオーラが広がっていく。
その存在感にプラスして、芯に迫るプレッシャーは背中の大剣のせいだ。
天獄剣と呼ばれた奉剣。
“天使”と呼ばれる上位存在を使役する神秘の武器。
それからは、天使一柱の強大な神霊力が漏れだしている。
(だが……それが……何だ? キサマらのセイギなど糞くらえだ)
ガルンの眼に危険な光が燈る。
封じていた心の奥底から、どす黒い焔がチロチロと漏れだす感覚。
「邪な気配だ」
デュランダークが再び剣に手をかける。
「止めておけ」
唐突に真下から声がかかった。
全員が息を呑んでガルンの影を見る。
そこには赤い、見知った瞳が爛々と輝いていた。
「副……団長?!」
唖然とデュランダークとガルンはそれを見る。
アルダークとマグリネスは仏頂面で沈黙した。
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