終章 月の無い空に世界蛇は哭く 序詞“緋天の開戦” #2

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「全く、馬鹿馬鹿しい。貴様らは戦前に何をふざけている? とっとと自陣に戻らんか痴れ者どもが」 影の声には、呆れを通り越して怒りが滲み出ている。 いや、殺意が。 「この戦いに生き残ったら、好きなだけ殺し合いをさせてやる。だが、今は駄目だ。今の貴様らの命は全てパリキス姫のものと思え。塵芥微塵も残さず捧げ尽くせ。いいな」 吸血鬼の鬼気は本気らしく、アルダークですら溜息を零した。 アルダークにも苦手なモノはあるらしい。 「話しがそれたな。我はうち(天翼騎士団)の者を宜しく頼むと言いに来ただけだったのだがな」 「……私は、魔剣士殿を一度じっくり見ておきたいと思ったまでです」 アルダークに続いて、デュランダークが弁解する。 マグリネスは武骨な顔に、苦笑いを浮かべただけであった。 「まあ、良い。貴様ら全員とっとと帰還し、明日の準備を整えて置け!」 影の主に告げられ、全員微妙な表情で顔を見合わせる。 その声に逆らえる権限を現在持つのは、総括のマグリネスと別騎士団のアルダークだが、二人はその言葉に従う様に、無言でその場を後にした。 ガルンとデュランダークもそれに倣う。 決戦前に微妙な空気を残して、騎士達はそれぞれの在りかに帰っていった。 唯一足元にへばり付く存在に、ガルンは批難の目を向ける。
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