終章 月の無い空に世界蛇は哭く 序詞“緋天の開戦” #2

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「何か言いたそうだな?」 アズマリアの声にガルンはムッとした表情で答える。 しかし、少ししてから足を止めた。 「あの王宮近衛騎士団の茶髪……あいつは何者だ?」 1番気になった一点。 その質問に影は笑ったようだった。 「英雄騎士アレス・デュランダーク。王宮近衛騎士団に居た時に、名前ぐらい聞いた事があるだろう?」 ガルンは名前を思い出そうとするが徒労に終わる。 根本的に他人への興味の薄い性格では仕方がない。 「王宮近衛騎士団最強と呼ばれる男だ。英雄騎士デュランダーク、現存する勇者の一人」 「勇者?」 余りに馬鹿馬鹿しい響きに、ガルンは小馬鹿にした笑みを浮かべる。 幾つもの戦場をくぐり抜けてきたガルンにとって、勇者と言う称号はあくまで英雄譚に上がる絵空事にしか感じない。 勇者とは、世間一般に浸透する程の偉大な功績を残した者につく名声だ。 既にそれを成し得たと言う事になれば、その実力は折り紙つきと言える。 「やれやれだな。メルテシオンでは有名な名なのだがな。王女を救い、邪神霊ネメシスを滅ぼした英雄。パリキス姫が掠われた話しは知っているだろう?」 それには思い当たったのか、ガルンの表情が変わる。
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