終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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「オイオイ、冗談じゃねぇ~な」 ハリイツは二つの事に驚いて、顔を強張らせる。 自ら放った黒炎の威力と、それをほぼ完全に無効化にした盾の威力にだ。 どちらも、個人武装には思えない程の能力である。 ハリイツの菫眼の黒い炎がゆっくりと消える。 「くそ、やはり本体を喰ってねぇーと打ち止めか」 奇妙な事を口走ってから、ガルンに向き直る。 赤銅色の身体からは、禍々しい赤い蒸気のようなものが立ち上っていた。 ガルンは妖刀を構えると辺りに目を配る。 黒炎を撃ち込まれた方向は焼け野原と化し、大地は濛々と煙り立ち上らせる以外は人影一つ見えない。 ハリイツの後ろ側、そちらにいた戦士達は恐怖に硬直している。 倒れているアビスもそちら側だ。 (これは、人数を増やしても犠牲が増えるだけだな)) 今の一撃で、どれだけの人間が蒸発したのかは定かではない。だが、今の攻撃を防げる戦力はそうそういないだろう。 「貴様らはアビスを連れて下がれ! 人数がいても邪魔だ」 ガルンの一喝で、生き残っている兵士達は顔を見合わせる。 直ぐさまアビスを抱えると、その場を離れ出した。 ハリイツはそれを横目で見ていたが、興味がないのかガルンに向き合ったままだ。
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