終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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その余裕なそぶりを見て、ガルンは沸々と闘志が湧いて来る。 「上等! 単騎戦闘は望む所だ!」 蝶白夢を振り上げた。 振り下ろされた刃から、水弾が放たれる。 圧縮された水の塊は、岩盤すら貫く力を持つ。 しかし、その水弾を目の前に立ち塞がった妖虎が、あっはさりと口腔で受け止めた。 飲み込まれる様は、以前の黒炎と同じである。 「あの……糞虎」 ガルンは歯軋りして、刃から水泡を出す。それは空中で弾けて水蝶となる。 それを見て、ハリイツは物欲しそうに妖刀を見た。 「その剣……面白そうだな? そいつを“喰えば”かなり多芸になりそうだ」 「……喰う?」 ハリイツの言葉にガルンは目を細めた。 先程の黒炎を思い出す。 あれはダークブレイズの炎と酷似――いや、そのものだった。 それをハリイツが使えたのは、何かしらの特殊能力なのは間違い無い。 喰うと言うキーワードで考えるのならば、自ずとその能力が見えてくる。 「そう言う事か……。仕組みは分からないが、そこのクソ虎が喰った力を、貴様は引き出して使う能力を持ってやがるな?」 ガルンの指摘に、ハリイツはゲラゲラと笑い出した。 「おおっ? 当たりだ当たり。さっきの炎は前回貴様からいただいたやつだ。俺と戦って、これだけ生き残っていた奴はいなかったからな。“夜叉の花弁”の能力に気付いた奴は久しぶりだ」
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