終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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大剣を肩乗せして瞳を指でさす。 そこには、ミヤマハコベと呼ばれる五つの花びらを持つ、菫に酷似した紋様が浮かんでいる。 「俺のタレント“夜叉の花弁”は相手を喰らう事で、その能力をこの花びらの枚数分ストックできる。本体を喰っていない場合は、喰った分しか力は使えないがな? 召喚者の霊体と融合する、幽冥獣ファン・フーとは相性が良い能力って訳さ」 ハリイツの言葉に同意するように妖虎が吠える。 「それは便利な能力だこったな。他人の力を使わなきゃ戦えもしないのか腰抜け君?」 ガルンは皮肉って見せるが、言葉遊びは単なる時間稼ぎだ。 突破口が見つからない。 ハリイツの言葉通りなら、その能力は五つあると考えられる。 一つはあの驚異的な身体能力強化の能力。 もう一つはダークブレイズの黒炎を撃ち尽くした事から、空の状態だろう。 となれば、少なくとも、別の能力が後三つはある事になる。 「他人の力? 面白い事を言うじゃねぇーかテメェ? 俺が喰い潰し、吸収した生命は全て俺の血肉だ。俺達、冥魔族は他者を喰らう事で進化する生命種、基から貴様らとはデキが違うんだよ?」 饒舌に語る口元が、悪魔の様に吊り上がっていく。 それは、他人を貪り喰うことに慣れた、簒奪者のそれだ。image=372188179.jpg
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