終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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何から何まで理解に苦しむ存在だった。 「貴様は、あの時の黒い魔剣使いか……」 ハリイツは空から降って来た少年を睨み据える。 今、少年が待っている得物は水の妖刀だ。 「また会ったな。以前のケリ、付けてやるぜ」 そう宣言して少年――ガルンは妖刀・蝶白夢を構えた。 「有り得ないかな……」 カナンは真横から飛び降りたガルンを、呆れながら見つめた。 カナンがいるのは地上ニ十メートル。 すなわち空だ。 白き銀嶺が人型を解き、前線に急ぐ為にドラゴンニュートと化して空を駆っているさなかの事である。 流石の白き銀嶺でも、人を乗せて飛ぶのは二人が限界だった。 両手に一人づつ。 ガルンとカナンを抱いて飛翔していたのである。 冥魔族の主力は洞窟入口付近だ。対空攻撃を受ける可能性は極めて低い。 停滞する軍の上を颯爽と越えている最中に、ガルンはいきなり飛び降りてしまったのだ。 地上には冥魔黎明衆の姿が見える。 「我らも降りて加勢するか?」 白き銀嶺の言葉に、カナンは首を二度振った。 「仲間のピンチに飛び出すのはガルンらしいけど、本来、それは私の任務かな? 私達も向かったら作戦が成り立たない。戦争している最中の命令無視及び、優先順位の判断ミスは致命的かな」
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