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何から何まで理解に苦しむ存在だった。
「貴様は、あの時の黒い魔剣使いか……」
ハリイツは空から降って来た少年を睨み据える。
今、少年が待っている得物は水の妖刀だ。
「また会ったな。以前のケリ、付けてやるぜ」
そう宣言して少年――ガルンは妖刀・蝶白夢を構えた。
「有り得ないかな……」
カナンは真横から飛び降りたガルンを、呆れながら見つめた。
カナンがいるのは地上ニ十メートル。
すなわち空だ。
白き銀嶺が人型を解き、前線に急ぐ為にドラゴンニュートと化して空を駆っているさなかの事である。
流石の白き銀嶺でも、人を乗せて飛ぶのは二人が限界だった。
両手に一人づつ。
ガルンとカナンを抱いて飛翔していたのである。
冥魔族の主力は洞窟入口付近だ。対空攻撃を受ける可能性は極めて低い。
停滞する軍の上を颯爽と越えている最中に、ガルンはいきなり飛び降りてしまったのだ。
地上には冥魔黎明衆の姿が見える。
「我らも降りて加勢するか?」
白き銀嶺の言葉に、カナンは首を二度振った。
「仲間のピンチに飛び出すのはガルンらしいけど、本来、それは私の任務かな? 私達も向かったら作戦が成り立たない。戦争している最中の命令無視及び、優先順位の判断ミスは致命的かな」
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