終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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作戦概要を知っているのに関わらず、見過ごせ無かったのがカナン的には嬉しかった。 昔のガルンならば、目的の為に犠牲はやむ無しの姿勢だった筈だ。 「代わりにガルンの空けた溝は、私が埋める」 カナンはそう呟くと妖刀を抜き放つ。 今のガルンとカナンは性質が“逆”になったようである。 今のカナンは目的が最優先の腹積もりだ。 戦争を終わらせる為には、犠牲もやむ無し。 カナンが後方の冥魔族討伐に向かえば、ガルンとカナンのポジションがスイッチした形になる。 それならば作戦に滞りはない。 カナンと白き銀嶺はそのまま、冥魔族を倒す為に天を進んで先を急ぐ。 「さて、予定が変わったがどうする?」 無名は目の前に現れたアロンに向かって剣を構えた。 無名、アカイ、ライザックは、ライザックの脚力強化の支援魔法を受けて先を急いでいた矢先である。 メルテシオン前線軍は、たった二人の冥魔族の為に瓦解しつつあった。 白き銀嶺に乗って先に行ってしまったカナンとは、現場で追い付く予定だったが、それすら綻んだ状態である。 アロンにとっては、現れた三人は雑魚の一部に他ならない。 しかし、そこには身に覚えのある人間が二人いた。 「……あの時の二人か」
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