終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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視線を向けられてアカイとライザックは身構える。 「気をつけろ無名。後の紙人形は手足が伸びる。カナン嬢ちゃんの話では、アレの身体は物体に当たる瞬間、位相をズラすと言っていたぞ」 「……物質の空間差し込み……結合分解か。まともに物理防御は不可能と言う事か」 アカイの言葉に、無名は渋い顔で答える。 以前戦ったカナンは、どうやら紐人形のタネを見切っていたらしい。 それを、あの場にいたガルンとアカイには伝えていたのだ。 「魔法防御をこれからかけます。無いよりはマシな筈なので」 ライザックが直ぐさま神聖魔法を唱え出す。 三人の隊長格の登場で、周りを囲っていた黒鍵騎士団のメンバーも前に出る。 「とりあえず時間を稼ぐ 事に集中しろ!」 無名の言葉に全員が頷く。 アロンの背中で、紐人形の両腕がゆっくりと持ち上がった。 大気が震えたのは、人影が通り過ぎた後だった。 空中に浮いていた水泡が次々に吹き飛ぶ。 防御に妖刀を挟もうとするが、とても間に合うスピードでは無い。 巨人の鉄槌を受けたような衝撃が身体を貫いた。 吹き飛ぶ身体の後に、ようやく音が追い付いく。 まるで大木を打ち鳴らした様な、大地に響く鈍い音が炸裂する。 弾き飛ばされた身体に、衝撃波が追い撃ちをかけるが、ガルンは歯を食いしばって態勢を無理矢理立て起こした。
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