終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

8/35
前へ
/35ページ
次へ
「やたら血行が良くなっただけはあるようだな?」 ガルンは赤銅色に変色した身体を見て、嘲笑って見せたが内心は冷や汗をかいていた。 身体の芯に残るダメージは並では無い。 ハリイツは菫の紋様が浮かんだ瞳を、ガルンに向ける。 菫の花びらの一つが紅く燃え上がっていた。 「前回は本気を見せられなかったからな? 今回は本気を見せてやれるぜ?」 ハリイツの言葉に同意するように、青白い妖虎が吠える。 ガルンは強気の姿勢を崩さないまま、チャクラを回転させていく。 速度強化に三つ、いや四つ開放した。 ハリイツのスピードには、それだけ力を投入しなければ間に合わない。 「しかし……」 ハリイツは、ガルンの右前方に浮かぶ物体に目をやる。 以前同様、必ず肝心な時に現れる謎の物体。 それが渾身の一撃を防ぐのだ。 先程の奇襲の一撃も、まるで始めから攻撃を読んでいたように割り込んで来た。 流石に今回は全力攻撃を放ったので、妙な物体ごとガルンを吹き飛ばしはしたが、まるでダメージを与えた実感は沸かない。 「その妙な物体は目障りだな」 ハリイツの目が細まる。 菫の瞳に黒い炎が燈った。 それと同時に、ハリイツの大剣に黒い炎が現れる。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加