終章 月の無い空に世界蛇は哭く 壱詞“ユガリウス直上決戦” #2

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見慣れた黒い炎に、ガルンは目を見開く。 「なっ……んだとぉ?! 馬鹿な、その炎は!」 「正解だ。貴様が、あの時、生み出した炎だ!」 大剣が振り下ろされた。黒い爆炎が撃ち放たれる 。 黒炎のダークブレイズ。 その一撃は一瞬で大地を融解させた。 不完全燃焼を起こしたような、空気が瞬間的に燃えただけのような、単発音が響く。 軍隊の一角が一瞬で蒸発したのは、かなりの遠くからでも確認出来る現象だった。 瞬いた黒い炎が、人の波を一瞬で飲み込む。 行軍していた後続の部隊は、目の前で起きた惨劇を理解出来ないでいた。 瞬きを一つしている間に、前を進む部隊が消え去り、凄まじい熱風が身体に吹き付けられて来たのだ。 唖然と立ち上がる煙りを、不可解そうに眺める。 「何だ、こりゃ?」 目を細めたくなるような熱気の下には、硝子のように結晶化した燃える大地が広がっていた。 濛々と立ち込める黒煙の中、ガルンは生唾を飲み込んだ。 自分の周辺以外、まるでくり抜いたように大地が灼熱を持ちながらえぐれている。 それだけの威力の中、自分が受けたダメージは衝撃のみと言う事実に驚くべきなのだろう。 “天三輝”。 パリキスに与えられた聖なる盾は、風変わりな容貌とは違い、その絶大なる力を遺憾無く発揮していた。
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