109人が本棚に入れています
本棚に追加
壱詞“ユガリウス直上決戦” #3
冥魔黎明衆“妖骸喰いのハリイツ”。
連れそう幽冥獣と命を共有する怪人。
内包した命を殺し切らなければ倒せない、不死の化け物なのだ。
「ったくよー!! 俺とファン・フーは霊格が高いんだよ! 蘇生にどれだけ溜め込んだ命を消費したと思ってんだ」
左腕を上げると、テレキネシスなのか化け物蜘蛛が空中に上がっていく。
まるで異形の龍が、天に昇っていくようだ。
「もう、出し惜しみは無しだ。こいつは勿体ないが……生贄に使う」
夜叉の花弁が光り輝く。
蜘蛛百足の身体は翠色の煌めきを放ちながら、ゆっくりと内側から爆ぜ割れた。
蝶の羽化を連想させるその動きから、白い塊が姿を現す。
蕾だ。
場違いの、巨大な花の蕾が現れた。
それがゆっくりと花びらを広げる。
中心には裸の女性の上半身があった。
両腕は無く、腰骨辺りから朽ちた木の枝が翼の様に広がっていく。
美しい端正な顔には、額に及ぶ五つの目が紅葉の葉の様に立ち並ぶ。
それを見てガルンは生唾を飲み込んだ。
精霊の眼に切り替える必要が無いほどの存在力。
外見には似合わない、荒々しく禍々しい気配。
心臓が早鐘のように鳴り響く。
「妖彗王“カリシリス”。彼の禍星に宿っていた神性存在。こいつは大喰らいでな、維持するだけでどれだけの命が消費されていくか分からない。だが……燃費の悪さを補う凶悪な能力がある」
最初のコメントを投稿しよう!