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終章 月の無い空に世界蛇は哭く 弍詞“星光は夢の終わり” #2
「ふーん。そう……そうなんだ。ガルンを潰すって言いたかったのかな?」
「いちいち、潰しに行くダニの名など知らんな」
「今度はダニ呼ばわり……へぇ~、よくカナンちゃんの前で吠えたね?」
ザワリとした殺気が世界を埋めた。
背筋を凍り尽くすような、尋常ならざぬ殺意の波動。
その世界にいた全員。
いや、幽冥獣どころか、外に居るアロンすら凍り付く。
「な……んだ、この気配は?」
横にいた白き銀嶺は思わず後ずさった。
温和な少女からは、思いもしない威圧感が漂ってくる。
恐怖に似た感情が、胃から喉元に競り上がってくるような違和感。
これでは幽宮の塔で感じた、千眼の魔神のプレッシャーに引けを取らない。
いや、それ以上か。
「滅殺決定~。うん。もう、め・ん・ど・く・さ・い・かな?」
そう呟くと、カナンは衡狐月を正眼に構えた。
身体全体から膨大な霊気が放たれるのを、白き銀嶺だけは理解する。そして、小太刀に集まる常識外の力を。
結界の外で、アロンは息を飲んだ。
圧倒的な力の集約。
一段階上の超越した力の波動。
あれではまるで、自分達より上位存在の様ではないか。
アロンは奥歯を噛み締めた。
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