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終章 月の無い空に世界蛇は哭く 参詞“英雄騎士” #2
ナギョクの言葉を聞いて、二人は別方向に顔を向けた。
「して、生命炉の周辺はどうじゃった?」
「まあ、予想通りね。向こうにとっても重要らしくて、ガッチガチにガードされてるわ。特に欝とおしいのがあの白いマントの連中。あいつらちょっと厄介だわ」
「例の黒い炎の剣使いはいたか?」
「そいつはいないけど、妙な剣を持った、金ぴか鎧は居たわね」
「人数は何人じゃ?」
「三人よ」
「フム。それならば排除は簡単か」
ナギョクの言葉に、ムボウは何故か固い表情になった。
「甘く見ない方が良いわよ。さっき言った金ぴかはかなり上玉だったし。白マントの連中を三人同時に相手をするのはかなりシビアよ。もうすぐ奴らは地下に入る。素直に冥夢の幻域に招き入れるのが吉ね」
ムボウの言葉に、ハリイツは嘲るように鼻を鳴らす。
「まるで“天道空洞のムボウ”の言葉とは思えんね。手を出して“逃げ帰って来た”ように聞こえるぜ?」
「……あんたこそ、私が助けなければ死んでいた癖に」
「テメェ……」
二人の間に見えない火花が散る。
ナギョクは小さく溜息をついた。
この二人は馬が合う時はとことん合うが、合わない時にはとことん合わない、妙な関係だ。
「とにかく、奴らが冥夢の幻域に入ったらワシの術をかける。後は各個撃破だ。いいな」
その言葉は、半ば諦め気味に呟かれた。
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