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「ついてねぇ……」
ネーブルは眼下に広がる洞窟を眺めて、ボソリと呟いた。
地上戦の先陣を切ったおかげで、洞窟口制圧後は拠点防衛をするだけと言う、美味しい部隊に配属された筈だったが……
思うように地下侵入が進まないために、急遽侵入路警護部隊にもお鉢が回って来たのだ。
それも攻撃中枢たるパリキス部隊の直衛である。
「危険度マックス……だな」
「どうしました隊長?」
「いんや、何でもない」
副隊長の声に考えを中断する。
ちょうどパリキス部隊のお出ましだ。
周りを固める戦力はそうそうたる面子である。
王宮近衛騎士団三人を筆頭に、名うての騎士団と僧兵団、虎の子の魔術師団が囲む。
本来ならこれだけで小国を落とせる戦力だ。
流石に洞窟進行を踏まえて、小隊規模でパーティー編成を始めている。
(あれだけ居れば十分だろうに)
ネーブルは腰に手を当てて、大きく嘆息した。
そこでビクリと身体を震わせる。
(まっ……ずい)
頭に過ぎるビジョンに、ネーブルの顔色が変わる。
「どうしたんですか隊長?」
再び副隊長が疑問に首を捻る。
ネーブルは明らかに顔色が悪い。まるで、丘に上げられた魚のようだ。
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