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「あれ……?」
リュオーはゆっくりと自らの胴体を見た。
黒い炎が刺さっている。
不思議そうにそれを眺めてから、前のめりに大地に俯した。
背中に開いた穴から黒い炎が漏れだし、そのまま
火だるまになる。
「なっ?!」
と、叫んだのはアビスだった。
倒れたのはリュオーだけではない。
横薙ぎに振られた黒炎刃は、一部の兵士をも巻き込んでいたのだ。
彼等も倒れたまま動かない。
ただ、不思議なのは彼等は一切燃えていない事だ。
「ガルン……お前……」
ネーブルが警戒心を体全体で表す。
ガルンの目は酷く濁ったままだ。
「戦いに巻き込まれる、クズの……事など一切配慮はしない。せいぜい、お前も逃げ回る事だ」
「てんめぇ!」
叫んでネーブルは固まった、目を白黒させて後方によろめく。
「なっ……、おま……」
顔面蒼白で心臓を押さえてうずくまる。
震える体で上半身を支えようとするが、そのまま力無く倒れた。
「くっそ……今頃ビジョンが……見えやがった」
震える声で顔だけ起こすと、ガルンを見てニヤリと笑った。
「お前の……死ぬ間際のビジョンが……見えたぜ。テメェーは何時か黒い勇者に……殺されるぞ」
「……そうかよ。なら、逆に言えば俺はこの場で、“死なない”と言う事になるな?」
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