第壱章『目玉のカードの事件と三鬼はじめ』

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 また模様だが、星、月、太陽。計三つの模様がカードの真ん中に浮かび上がる。簡単に言えば、上から、下、中、上の三段階評価として分けられている(白は例外)。つまり、カードの最高クラスは、黒の太陽のカードが、最高評価と言う事になるのだ。 さて、神力学とカードの関係性に幾らか説いたところで、物語を元に戻したいと思う。  この、白いカードを持つ三鬼はじめの視点にだ。  学校の裏にある草庭で、寝転がりながら自分の白いカードを見つめる。模様は掻かれていない。このカードが意味するのは、自分はたった一人とも神と契約をとる事が出来なかった落ちこぼれという事。学園一の、無能もの。なんとなく、コンプレックスの塊みたいな存在に思えたので、溜息ついてそこらへんに適当に放り投げておいた。  「痛っ!」  男の声がした。少し高めの声。男と言うより、少年に近い声。知った顔だと思い、はじめは顔を持ち上げる。そこには、頭をさする少年の姿があった。  「痛いよはじめ。物とか投げちゃ駄目なんだよ?」  「あ、ぶつかったか。悪い」    体を起こし、立ち上がる。こうしてマジマジ見ると、中々の優男。否、華奢男と言うべきか。160程しかない背が、より一層華奢さを表す。黒い長髪が肩にかかる。セミロングぐらいの長さだ。顔つきは、童顔と言うべきか、まぁ、良くも悪くも優しそうな顔つきをした男だった。ブレザーの服装と何処か釣り合っていない風貌。落ち着いた声色が、この場に透き通った。  「オリガミ。怪我無いか?」  「うん。カードが頭に当たっただけだよ。たんこぶ一つないよ」  オリガミ、この華奢男の名前らしい。名字は、七織。七織オリガミが、この男の名。そんなオリガミの手には、水筒とお弁当。そのセットから、今の時間がお昼時なのに気付く。携帯の時間を確認すれば、大体十二時半。  「もう昼か?」  「またここで授業サボってお昼寝でもしてたの? もうお昼だよ」  「もうそんな時間か」、なんて適当に相槌をうつはじめの横にオリガミが座り、弁当箱を開けていく。お箸も取り出し、いただきますと一礼した彼はおかずに舌鼓する。弁当から漂う良い匂い。はじめの腹の音が鳴った。
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