第壱章『目玉のカードの事件と三鬼はじめ』

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 「はは。プチトマトでもいる?」  「お前、俺がトマト嫌いなの知って言ってるだろ」  「あらら、バレちゃった?」  クスクスと笑いながら、お弁当のお米に手を出す。その様子を見ていると、より一層お腹がすいてくるのは、人としての性である。ふと、おかずの中に美味そうな物を見つけたはじめはそれを指さす。  「そのハンバーグ半分くれよ」  「中々大きく出たね。でもダメ」  「ちっ」  「舌打ちなんて酷いなぁ」  結局、ハンバーグを一切れ貰うという事で手を打ってくれた。美味い美味いともぐもぐ食べていると、「あ、そうだ」、オリガミがポケットを探ったかと思えば、はじめのではなく自分のカードを取り出した。カラーは灰の星。白の次のランクのカード。つまりは、はじめと比べて一つ上な訳だ。  「この前ね。僕、神様と契約できたんだよこれで三つ目だ」  そう嬉しそうに喋るオリガミにはいはいと相槌をうつ。「それで」、そう会話を繋げると、何の神様と契約したかを聞き出す。待ってましたと言わんばかりに、カードを握り直し。手元にかざす。 すると、指先から小さな炎がでる。  「ちっせ」  「あ、酷い。これでも五時間ぐらい念入りに頭下げたんだよ」  「かなりゴリ押しだったんだな」  なんの神様と契約したのだと聞けば、『マッチ棒の付喪神』だそうだと意気揚揚に語り、どれだけ自分が頭を下げたのかを説明してくれた。聞けば聞くほど出てくるのは頭の下げ方ばかりで、交渉とは無縁の話である。  それはさておき、付喪神とは、単純な話。物に宿る神様である。長い年月をかけて、物には霊魂や神格が宿るだの昔から色々言われているが、要は物を大切にしようなどと言った信仰心と言うよりは、教えみたいなものだった。言いだしてしまえばキリがないのだが、神力学が実際にこうして、付喪神の存在を証明して見せた事から、物には本当に神が宿っているのだと、現在では唱えられているのだ。
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