第壱章『目玉のカードの事件と三鬼はじめ』

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 その顔と体系でムキムキになったら不釣り合いだろうな。とか色々思ったが、口にはしない。彼とオリガミはルームシェアをしているので、彼が日々筋トレをして努力しているのは知っている。彼の努力を知っているからこそ、素直に、前向きに、そして健気に努力する姿は尊敬すらしている。けど、その努力の結果が見合ってないのが、七織オリガミの現状である。  「いつか君を守れるぐらいムキムキになるから期待しててね」  言われて彼の体格をもう一度見直す。一言で言えば華奢である。言っては悪いが、ダンベル一つ持ち上げられなさそうな感じである。童顔もあって、その頼りなさが余計に拍車がかかる  「……まぁ、その。もう少し、鍛えねぇとな」  「うん。頑張るよ僕」  無理だと言いきらないのが彼の優しさである。  「あ、そう言えば今日の晩御飯何が食べたい?」  オリガミが、ふと尋ねる。先程にも書いたが、二人は同じ学生寮の部屋一つをルームシェアしている。故に、ご飯は当番制なのだ。今日はどうやらオリガミがご飯当番らしい。因みにいうと、料理の技術的にはオリガミの方が上手い。はじめに任せると、ご飯とみそ汁しか出てこない。  「酢の物」  何が食べたいかと言われ、すぐに思い浮かばないもの。取りあえず、好物がふわっと頭に浮かんだので即答。  「昨日つくってあげたじゃないか」  「またくいてぇ」  「好きだねぇ。でも昨日食べたし、酢の物は駄目だよ」  「じゃあ何で米食えばいンだよ」  「お米と酢の物のセットもどうかと思うなぁ。ヘルシーだとは思うけどさ。あ、お肉とかどうかな? ひき肉あったし、ハンバーグとか。お肉ならお米とあうと思うよ」  「ならハンバーグは小さめで、野菜多めにしてくれ」  「ヘルシーだなぁ。どうしてそんなカロリー低そうな食生活でその体が出来上がるのか不思議で仕方がないよ僕は」  今度はオリガミがはじめの体格を眺めてみる。およそ30ぐらいある身長差に加え、がたいの違いになんとなく格差社会を感じる。オリガミはどちらかと言えば肉が好きでよく食べるのに、体に現れない不思議。  「食わなくても太る体質なんだろーな」  「それはそれで損な体質だと思うよ」
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