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少女は、黒いカードをスカートのポケットから取り出す。カードには、月の模様が描かれていた。そのカードを地面にかざすと、地面から、大きな土のブロックが壁となって現れる。炎はその壁に遮られ、
二度目の攻撃は不発と終わった。
「それに、校外での神の使役は学則違反だよっ! そんなことしたら駄目じゃんか!」
言い終える前に三発目が襲いかかる。同じようにして前に壁を出現させると、カーブを描いてファイアボールがその壁を避ける。炎のカーブボール。中々の技術だと感心する前に、彼女の防御を回避して、改めて襲いかかるこの攻撃に何か手を打たねばならない。
慌てて、カードに空を描く。すると、大きな風が吹き、その風の威力で軌道が逸れた。
「もう! いい加減にしてってば!」
野球部の男の足元にカードをかざす。同じようにして凄まじい勢いで現れる巨大な土のブロックもとい壁が、その男の足元に現れる。そしてそのまま「何だ?」と下に向けた男の顔を打ち抜いた。ブロックが現れる勢いを攻撃に転じた訳だ。鈍器で下から殴っているようなものだ。相当効いたのか、顎に入ったか、その一発で見事にのびてしまった。
紺のブレザー制服。赤いリボン。黒いショートカット。何処か幼げで、凛々しい顔つき。背は150ちょっとあるかの小ささが特徴の、そんな女子高生がやれやれと息をついた。カードをポケットにしまい、気絶した男のそばに近寄る。
その男のそばには、先程の少女と似たカードが落ちていた。しかし、特徴は違い、色は先ず赤黒く、そして目玉の模様が描かれていた。目玉は大きく目を見開き、なんだか此方を見ているような気分になる。不気味と言うべきか、赤黒さがまた一層かきたてる。
「やっぱりこのカードなんだ……」
そのカードもポケットにしまい、今度は溜息を吐く。
「最近多いなぁ。このカードの事件。早く解決しないと……」
少女は、頭をぽりぽりと掻きガックリとした仕草を取る。そのままポケットからスマートフォンを取り出すと、手慣れた操作で伊波二葉と書かれた女性に電話をかけた。三回ほどのコールででたその声は、女性の物であった。伊波二葉は女性のようだ。
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