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「それって……」
「俺たちの時間を、なんて言うと思った? まさか! ミナはロマンチストだね」
やられた。ケラケラと笑う彼を見て、さっき強気でと決意したのに、既に心がくじけそうになった。
「あ、ケーキは苺のショートケーキにしよう」
「なんで?」
「せっかくだし、苺のショートケーキにもっと嫌な思い出をつけ足してやろうと思って。一流シェフのプロデュースとかいいんじゃない?」
彼はまたからかうように笑った。
「ねぇ、もしかして前より性格悪くなった?」
「まぁね……。変わるんだよ、5年も経てば、いろいろ。あんな別れ方したら誰でも性格もねじ曲がるんじゃない? 何にも信じてくれない誰かさんのせいでね!」
今日私が言った言葉を合わせて使って更に攻撃してくる。
「……酷いね、月森は」
そう漏らしたけれど、ここまで続くと5年前の感覚が戻ってきたのか、耐性がついてきたのか、とにかく本気の嘆きではない。
むしろ彼は今日私と出会ってからずっと猫かぶっていて、ここまで様子を窺っていたのかと思うと、なかなか手の込んだ嫌がらせだなぁと感心する気持ちさえ起こる。
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