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薄暗いトイレで、 わたしと彩加は 顔を見合わせていた。 一緒に個室のドアに手をかけ、 せーの、で一気に開く。 中を覗くと、 ――そこには誰もいなかった。 わたし達が身体を避けると、 二人の間にカメラが分け入り、 個室の中を撮影する。 「やーい、ヒロシの変態、 女子トイレ撮ってるー」 彩加のからかうような声に、 「うるさいっ。 こういう時しか撮れないから、 念入りに撮ってるの」 「鼻息、荒すぎだから」 「おいっ。……まったく、音声 使えなくなっちゃったじゃねえかよ」 ヒロシくんは一時停止ボタンを押して、 「しょうがねえな、 ナレーション被せて誤魔化すか。 トモコ、メモっといて。 『課外校舎の2階女子トイレ、 ナレーション』ね」 「りょーかいっ」 トモコはボールペンを出して、 薄っぺらい台本に せっせと書き込みを入れた。
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