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「お待たせ!」 カメラを担いだヒロシくんが 軽い足取りでトイレから出て来た。 「次は、音楽室だな。 深夜にバッハの胸像が 校内を徘徊する、ていう、あれ。 撮りに行こう」 「うへ、なんかインチキくさ」 「文句言うなよなぁ、奈良崎」 「へいへい」 彩加は、歩き出しながら ひょいっとわたしの手を取った。 …あれ。 わたしは思わず彩加の顔を見た。 …彩加…本当は、怖いんだ。 わたしは、微かに震える 彩加の手を、しっかりと 握り返した。 『奈良崎さ、暗闇で一人になると、 パニック起こすんだよ。』 昨日の帰り道、田辺くんは 自転車を押しながらそう言った。
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