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田辺くんは、元気の かたまりのように見える 彩加の弱い部分を知っていて、 さりげなく裏でフォローしている。 以前、彩加がトモコと 大喧嘩した時にも、 彩加が本当はすごく 傷ついている事を分かっていて、 後で上手に二人を誘導して 仲直りさせていた。 いくら好きな相手だとしても、 その陰の部分を理解して 守ってあげるのは、きっと 簡単な事じゃない。 それが出来ると言う事は… 田辺くんが、心から 彩加を大切に思っている 証拠だと思う。 わたしはそっと振り向いて、 撮影班の後からついて来る 春山先生の方を窺った。 いつか、…わたしたちも そうなれるだろうか。 想像してみようとしたけれど、 先生の弱い部分どころか プライベートを何一つ知らない事に 気付いてしまい、 わたしはまたがっくりと落ち込んだ。 「うわあ、不気味…」 音楽室に足を踏み入れると、 彩加がわたしにすがりついて来た。 教壇の脇に置かれた音楽家の胸像が 月明かりに照らされ、 ぼんやりと浮かび上がっていた。
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