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先生は、グランドピアノの
足元の床にさっさと腰かけ、
壁に寄りかかった。
「おいで」
わたしは手を引かれるまま、
先生の隣に並んで
ちょこんと腰を下ろした。
グランドピアノの陰に隠れていると、
まるで小さな空間に二人で
閉じ込められたようで、
何だか余計にドキドキする。
「お前に聞きたいこと、
あるんだけど」
「…え…」
薄暗い部屋の中で、
先生の目が窓の外の電灯を反射し、
輝いて見える。
「…ミツルのこと。
…昨日、お前、何で泣いてた?」
「……」
「ほんとに、キスされたの」
先生の優しい問いかけが、
わたしをふんわりと包み込む。
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