第五世 蘇る記憶

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「…………」 背を向けたまま口を噤んでしまった柳に、晁光は慌ててもっともらしい言葉を並び立てる。 「ほらっ。浅葉君が見てる夢と俺の夢、なんだか似てるだ? それで俺なりに色々調べてみてさ、何か意味があるんじゃないかって思ったんだけど、やっぱ一人で調べるには限界があって……同じ夢を見てる者同士、色々意見交換とかしたほうがいいんじゃないかなって……」 「…………」 おずおずと肩越しに振り返った柳と視線が重なると、晁光は困った顔をして頭を掻いた。 「あ……やっぱり、昨日のこと気にしてる? もう、あんなことしないって誓うからさっ……だからっ……そのっ……」  焦って言い訳をする晁光の姿に、柳は目を細めると静かに口を開く。 「……明日」 「えっ」 「……また、明日。授業が終わったら顔出します」 「あっ、うんっ。待ってるよっ」 嬉し気に声を上げた晁光に、柳は軽く会釈すると再び背を向ける。 「じゃあ」  次第に遠ざかって行く柳の姿を見送りながら、晁光は切な気な表情を浮かべると、もう聞こえないだろう彼に向かって言葉を続けた。 「……待ってるよ……”柳月”。ずっと……待ってる」 「…………」  背中に痛いほどの熱い視線を感じながも、柳は立ち止まることはせず前へと進んで行く。 心の奥底から沸き上がってくる想いを抑え込むようにキツく両拳を握り締めると、そっと下唇を噛んだ。
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