第六世 交わらない魂

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~ いつも二人が出逢うセイヨウサンザシが咲く丘の上。  その木に顔を伏せ、一人肩を振るわせている柳月の姿に、晁光は困惑した表情を浮かべた。  「柳月?」  戸惑いながら彼女の華奢な肩に手を置くと、涙で頬を濡らした柳月が振り返る。  「? なんで……泣いてる?」  そう問いかけても、柳月は小さく笑み首を横に振ると、晁光の胸へと身体を寄せた。  「…………」  頼りなく凭れ掛かる彼女の肩を、晁光は戸惑いながらも抱き寄せる。  これ以上、かける言葉が見つからなかった。  ただ今は、やっと触れることができた彼女の熱を、もっと感じていたい。  例え夢の中だけだったとしても、彼女との距離が徐々に近付いているのは確かだ。  今まで触れることさえ叶わなかった。  それが先日、ようやく口づけを交わすことが出来たのだ。  もっと、彼女を近くに感じていたい。  せめて夢の中だけでも、以前のように心を通わせたいとーーーー。  そっと彼女の肩を押し、静かに涙を流す顔を覗き込む。  「柳月」  頬を伝う涙を親指で拭うと、柳月は花が咲いたような綺麗な笑みを浮かべた。  その微笑みが、なぜかとても切なくて、晁光は眉を潜めると柳月の頬を両手でそっと包み込む。  「もう……何処にも行かないよな?」  なぜ、そんなことを聞いたのか。  自分でも分からないまま、沸き上がる不安を振り切るように、晁光は濡れた柳月の瞳を覗き込む。    必死な様子で自分の言葉を待っている晁光に、柳月は再び小さく微笑むと頬に触れる大きな手に自分の手を重ねた~
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