第六世 交わらない魂

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 大学のキャンパス。  一人、虚ろな表情を浮かべ校舎への道のりを歩いていた柳の背中を、後ろから駆け寄ってきたレナは思いっきり叩くと笑顔で振り返る。 「おっはよー! 浅葉君」 「!!」  レナの不意打ちに、柳は一瞬顔を歪めるも、屈託のない笑顔で自分の反応を伺っているレナの姿に苦笑いすると何事もなかったかのように再び歩き出した。 「おはよう」 「?」  文句の一つも言わず、自分の横を通り過ぎて行く柳の姿に、レナは目をパチクリさせると慌てて柳の後を追い隣に並ぶ。 「ねぇ?」  ふいに声を掛けてきたレナを一瞥すると、柳は穏やかな笑みを浮かべ返事を返す。 「ん?」 「なんかあった?」 「なにが?」  柳に即座に聞き返され、レナは首を傾げるといつもと雰囲気が違う柳の姿をマジマジと見詰めた。 「んー、なんか元気ないって言うか……いつもと違うっていうかぁ」  自分の横顔を覗き込みながら考え込んでいるレナを余所に、独り物思いにふけっていた柳はふと何かを思い出したように立ち止まる。 「……あのさ」 「なに?」 自分に釣られて立ち止まったレナに顔を向けると、柳は目を細めた。
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