第六世 交わらない魂

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「何か分かりました?」  ふいに頭上から声をかけられ、晁光は一瞬身体を大きく震わせると慌てて顔を上げる。 「えっ?」  何やら驚いた顔をして自分を見上げている晁光の姿に、柳はクスリと笑うとコーヒーが入ったカップを一つテーブルの上に置いた。 「例の夢について」 「あっ、あぁ……いやっ……特に……」 焦って手にしていた本のページをパラパラと捲り誤摩化す晁光に、柳は笑いを堪えながら何食わぬ顔で向かいの椅子へと腰を下ろし、自分のために入れたミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーを啜った。 「そうですか」  穏やかな表情を浮かべ、コーヒーを堪能している柳の様子をそっと盗み見ると、晁光は戸惑いながら声をかける。 「浅葉君の方はどう? 何か夢に進展あった?」 「その前に、ちょっと休憩でもしたらどうですか?」 「えっ」 「せっかくコーヒー淹れたんですから、冷めちゃいますよ」 微笑みながらそう言った柳に、晁光は目の前に置かれたコーヒーに視線を落とすと苦笑いしながらカップに手を添えた。 「あっ、そ、そうだねっ。ありがとう。いただくよ」 「どうぞ」 再び柳が此処を訪れて来てくれたことに、思わず舞い上がってしまった自分を恥じた。 彼が此処に来た理由は、夢の真相を知りたいからだ。 それ以下でもそれ以上でもない。 分かってはいるが、こうやって再び彼と同じ空間で過ごせることが堪らなく嬉しかった。
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