第六世 交わらない魂

15/27
前へ
/140ページ
次へ
 柳は下唇を噛み締めると、カップを持つ手に力を込めた。 途端、水面に映った顔が歪み姿を無くす。 その様に深く息を一つ吐くと、ゆっくりと唇を動かした。 「「あの」」 同時に晁光から同じ言葉が発せられ、柳は一瞬目を見開くも口を噤む。 「あっ、なにっ?」 だが直ぐさま問いかけてきた晁光に小さく笑むと、柳は言葉を促した。 「……先輩こそ、お先にどうぞ」 「いやっ、俺のは大したことないから」 先に話すよう促す晁光から目を逸らすと、柳は静かに口を開く。 「……先輩は、例の夢を調べてどうするつもりですか?」 「……どうするって……?」 意味が分からないと言った様子で聞き返してきた晁光に、柳は一瞬、顔を歪めた。 繰り返し見続ける夢に、いつまでも囚われている晁光が不憫に思えた。 どんなに時間を割いて同じ夢を繰り返し見続ける原因を探したとして、答えなどきっと見つからない。 例え見つかったとして、それが何になるというのか。 所詮、夢は夢だ。 現実ではないと。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加