第六世 交わらない魂

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 不安そうな顔をして自分の言葉を待っている晁光を一瞥すると、柳は深く深呼吸する。 そして出来るだけ冷淡な声を意識して、言葉を続けた。 「同じ夢を見る原因を突き止めたとして、それでどうするんですか?」 「……それは……」 「…………」  口を噤み答えを待っている柳に、晁光は困惑した表情を浮かべると瞳を泳がせた。 彼の物言いは、まるで自分がしていることを責めているように聞こえた。 そんなことをしても、どうにもならない。 原因を突き止めたとして、何も変わらないと。  真っすぐと自分を見据え無言で訴えてくる柳に、晁光は顔を歪めると小刻みに首を左右に振った。 そんなことはない。 原因を突き止めることが出来れば、きっと変われるはずだ。 失われた彼の記憶を、取り戻す事が出来ると。  晁光は身を乗り出すと、未だ現世の記憶を思い出せない柳に語りかける。 「浅葉君だって、原因を知りたいと思ってるんだろ? だから、このサークルに入ったんだよね?」 本当は、彼だって知りたいと思っているはずだ。 そして、いつか自分のように、互いに惹かれ続けた果てしなく長い年月を思い出す。 そのときこそ、この想いは報われると。
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