第六世 交わらない魂

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 必死に誤解を解こうとしている晁光に、これ以上何も言わせてはいけないと、柳は振り返ると深々と頭を下げる。 「コーヒー、ご馳走さまでした。申し訳ないですけど、サークルは今日限り辞めさせていただきます」  唖然としていた晁光だったが、柳が踵を返した途端、目を見開くと勢いよく振り返り柳の腕を掴んだ。 「待ってくれっ」 「っ……!」  晁光が腕に触れた途端、柳は驚きで目を見開くと身体を硬直させる。 それは腕を強く掴まれたことによる痛みではなく、何か温かいものが身体の中を駆け巡って行く感覚に当惑した。 「…………?」 柳と同じように、その感覚に違和感を覚えた晁光は、困惑した表情を浮かべると、自分が握り締めている手へと視線を落とす。 初めて彼に触れたときとは違う、心地よい感覚に胸が熱くなる。 今まで拒絶されていた心が、まるでひとつに溶け合って行くような不思議な感覚に、もっと触れていたいと思った。
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