第六世 交わらない魂

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「……離して、もらえますか」 ふいに聞こえた柳の弱々しい声に、晁光は我に返るも直ぐさま、両手で彼の腕を握り締めると必死で訴える。 「っ……部員が、足りなくて……だからっ……」 「……っ……」 顔を歪めた柳が、自分の行動を不快に思っているのだと気付きながらも、ここで手を離してはいけないと思った。 なんでもいい。 彼を引き止める為ならなんだって。 例え嘘を吐いてでも、やっと出逢えたのだから今度こそ離してはいけないと。 「たまに顔出してくれるだけでいいんだっ……だからっ……辞めるなんて、言わないでくれないかっ?」 「でもっ、僕がここに居る意味は、もう……」 「だったら幽霊部員でもいいっ」 「!」 驚いたように目を見開いた柳の腕に、晁光は必死で縋り付くと言葉を続けた。 「君は、なにもしなくていいからっ……たまにでいい。気が向いたら、少しだけ顔を出してくれるだけでっ……!!」
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