第六世 交わらない魂

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「…………」  まるで懇願するかのように項垂れ腕にしがみつく晁光の姿に、柳は瞳を潤ませると顔を背けた。 こんなに必死になって自分を引き止める晁光を、これ以上突き放すことなど出来ない。 何年も何十年も想い続けた人のたった一つの願いを、無下にするなど出来る訳がないと。 「…………分かりました」 「!!」 思わずそう口にした途端、弾かれたように顔を上げた晁光に、柳は気まずそうに目を伏せる。 「だから、手を離してもらえませんか」 「あっ、ごめんっ」 「いえ……」 慌てて手を離した晁光に軽く会釈すると、今度こそ部屋を出ようと柳は踵を返した。 「浅葉君っ」 途端、背後から晁光に呼び止められ、柳は顔を歪めると足を止める。 「……はい」  背を向けたまま返事だけ返してきた柳に、晁光は泣きそうな顔で微笑むと言葉を詰まらせた。 「っ……ありが、とう」  震える声で晁光が言葉を口にした途端、一瞬、柳の肩が震えたように見えた。 「……失礼します」 だが直ぐに柳は晁光に振り返ると、深々と頭を下げ部屋を出て行った。 ゆっくりとドアが閉まる。 その様を見詰めたまま、晁光は微かに感じた柳月の面影を確かめるように、彼に触れた手を握り締めた。
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