第六世 交わらない魂

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 何かをじっと見詰め硬直している晁光から視線を窓の外に移した衛は、道路を挟んだ道の向こうを、同年代ぐらいの女性と肩を並べ楽し気に歩いている柳の姿を捉えると思わず顔をほころばせた。 「あー! 浅葉君じゃねー? 隣に居る子、かっわいいぃ~!」 「…………」 身体を強ばらせたまま動かない晁光とは裏腹に、仲睦まじい二人の姿に、衛は顔をニヤケさせると言葉を続ける。 「やっぱせっかくの休日だもんなぁ~。野郎と一緒に過ごすより可愛い女の子とデートするべきだよぉ」  自らの言葉に納得したように頷いている衛の言葉を聞きながら、晁光は顔を歪めると窓硝子についていた手を握り締めた。 思わず大声を上げてしまいそうになった。 そんな自分を必死で抑え付ける。 衛の言葉など真に受けてはダメだ。 柳月に彼女がいるなんて……そんなこと、ある訳がないと。 「っ……そんなのっ……分からないだろっ」 「ん~?」 呑気な声で聞き返してきた衛を睨み付けると、晁光は喉から声を絞り出す。 「デートかなんて……分からない」
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