第七世 君がいない世で君を想う

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~  目が覚めると、そこは薄暗い小屋のような建物の中だった。   荒い建て付けのせいで、壁板の隙間から春の木漏れ日とともに鳥のさえずりが聞こえて来る。   薄汚れた板の上で、まるで自分の身を守るかのように小さく身体を丸めていた晁光は、小さく身じろぐと、まだ眠気が覚めぬ眼を擦り上半身を起こした。   外はすっかり春へと季節が変わっている。  だが、日当りも悪く雨風を凌ぐのにやっとのこの部屋の中では、あまり温かさを感じることはできなかった。   既に家族と呼べる者がこの世にいなかった晁光は、毎日を”ただ生きるため”だけに過ごしていた。   親類も友と呼べる親しい人達もいない。   その日その日を生き抜くため、ただ必死だった。   生きる為に他人のものを盗み、殴られ、蔑まれても、そうすることでしか生き抜く術を知らなかったから。   だから、今日もこの日を無事生き抜く為、出かけなければならない。   例え人の道に外れようとも、それが晁光がこの世で与えられた人生だ。
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