第七世 君がいない世で君を想う

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   家と呼ぶには心もとない小屋を出ると、晁光は森へと向かった。   こんな人生でも生き抜く為には食べる物が必要だ。   何でもいい。   腹を満たせれば落ちている物でさえ拾って口にした。   だが、肌寒くなってきたこの季節。   自然に成っているものを手に入れることは難しくなる。   そうなったら、飢えを凌ぐのにやることは一つだ。   持っている人から奪うこと。   それがいけないことだと知りながらも、晁光は森を抜けると、その先にそびえ立つ、いくつもある屋敷の一つへと忍び込んだ。   初めて入った屋敷の庭先に隠れ、晁光は辺りを見渡した。   運良く、人影はいなく縁側がある襖は換気のためか、開け放たれていた。   慎重に、一歩ずつ、ゆっくりと近付いて行く。   周りに人はいなくても、いつ誰が現れか分からない。   もし見つかったら、こんなみすぼらしいなりをした自分は、あっという間に袋叩きに合うだろう。
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