第七世 君がいない世で君を想う

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  晁光が縁側に手をついた途端、部屋の奥から微かに人の声が聞こえ、咄嗟に縁側下へと潜り込んだ。   緊張で早鐘を打つ鼓動を抑えると、息を殺し耳をそばだてる。   次第にはっきりと聞こえるようになってきた声は、何かの歌声のようだった。   初めて聞く綺麗な声に、晁光は思わず顔を覗かせると、声の主を一目見ようと薄暗い部屋の奥へと目を凝らす。   そこには、自分と同じ歳ほどの女の子が一人、布団の上で正座しお手玉をしていた。   透き通るように白い肌をしたその子は、とても綺麗で晁光の目を釘付けにする。   だが、彼女に惹かれた理由は、それだけではなかった。   美しいが、何処か儚気で、今にも消えてていなくなってしまいそうなその出で立ちに、消えて欲しくないと強く願ったのだと思う。   そして出来れば、自分の方を向いて、笑いかけてくれればと……。   そんなことをしたら、此処を追い出され酷い目に合うのに、早く自分の存在に気付いて欲しいと、そう願いを込めて彼女を見詰めた。
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