第七世 君がいない世で君を想う

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  ふと、一瞬、強い風が吹き、庭先に咲いていたセイヨウサンザシの花びらが宙を舞う。   部屋の中に舞い込んだ一枚の紅い花びらは、くるくると回転しながら落下していくと、彼女の膝の上へと舞い落ちた。   それに気付いた彼女は、お手玉を畳の上に放ると、花びらを摘み上げ顔をほころばせる。   何処から舞い込んで来たのかと、彼女が顔を上げた途端、自分をじっと見詰める晁光と視線が重なり、彼女は身体を強ばらせた。   だが、次の瞬間、目を細めると、次第に顔をほころばせていく。   彼女にとって、この世に生を受けてから初めての経験だった。   自分と同じぐらいの歳の子供。   きっと、神様が哀れな自分を思い、与えてくれた贈物だと。~
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