第七世 君がいない世で君を想う

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 昼休み。  大学のキャンパスでは、あちこちで学生達が楽し気に昼休みを過ごしていた。 仲間達と賑やかに過ごす者。 恋人同士で、ひっそりと二人だけの時間を楽しむ者。 皆、思い思いに楽しい一時を過ごしている。  購買で買ったパンを片手に、キャンパス内を徘徊していた晁光は、今日何度目かの溜息を吐くと、足を止めた。 昨日、見た光景が頭を離れない。 楽し気に、女性と肩を並べて歩いていた柳の姿。 彼女に向ける、優し気な眼差し。 当たり前のように彼女の手を握っていた、彼の手。 すべては、初めて見る柳の姿だった。 抱擁力のある男性の姿。 そこでやっと気付いたのかもしれない。 柳は、自分が知っている彼女ではないことを。 彼は自分と同じ、”男性”であったことに。 やはりこの世でも、報われない想いなのだろうか。 もしかしたらこの先ずっと、報われることなどーーーー。
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