第七世 君がいない世で君を想う

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「晁光!」  突然、背後から肩を叩かれ、晁光は我に返ると訝し気な顔で肩越しに振り返る。 「? ……衛」 「なにボーッとしてんだよっ」 いつもと変わらぬ衛の姿に安堵すると同時に、やはりこれが現実なのだと落胆する。 「……別に」 この世では自分は大学生で、そして柳月は自分の後輩。 前世のように身分の差や、血縁関係で自分達の中を引き裂くものはない。 平凡で穏やかな世界。 だが、お互い同じ性を持って生まれてしまった以上、結果は見えている。 結局、この世でも結ばれない運命なのだと。  一人肩を落としている晁光を余所に、衛は辺りを見渡し一組のカップルを見つけると嬉し気に声を上げる。 「あぁ! あれって浅葉君じゃねっ?」 「えっ?」 慌てて顔を上げた晁光に、柳がいる方向を指差すと衛は勢い良く足を前に踏み出した。 「あれだよっ。例の彼女と一緒っ。挨拶いってこよーっと」 途端、晁光は血相を変えると、衛の肩を掴み引き止める。 「待てよっ」 「なんだよっ?」 怪訝な顔をして振り返った衛に、晁光はばつが悪そうに視線を逸らすとぼそりと呟いた 。 「迷惑だろ……やめとけよ」 「んな固いこと言わない、言わないっ」 だが、衛は自分の手を振り払うと、柳の元と走って行ってしまう。 「おいっ!」 「浅葉くーん!!」 「っ……!!」 止めるのも虚しく、柳と彼女の間に割って入っていった衛の姿に、晁光は顔を歪めるも、渋々その後を追い重たい足を踏み出して行った。
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