第二世 神の悪戯

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 西洋文化を盛んに日本が取り入れ始めた時代、とある大きな屋敷では、そんな世間の変化など気にもとめない様子で、一人の男が窓辺に立ち部屋の中から庭先に色づく赤い花を眺めていた。  上品なスーツに身を包み、中割に整えられた髪型は自分の好みとゆうよりも、世間体を気にする親の影響だろう。 上級階級と呼ばれる家庭に産まれたからには、それなりの身なりであることと知性を求められた。 以前の自分とは大違いだと、男は皮肉の笑みを浮かべると、西洋文化に感化された部屋を見渡す。 あと1ヶ月もすれば、此処は一人の部屋じゃなくなる。 妻となる女性と、この部屋を共有し、やがて子供を儲けるだろう。 それが、この世で自分に課せられた使命だと。  男が深い溜息を吐いた途端、廊下の方から慌ただしい足音が聞こえ、何の前触れもなくドアが勢いよく開け放たれる。  肩で息をしながら部屋の中に入って来た一人の美しい女性の姿に、男は目を細めた。 こうやって彼女の姿を目にするのは5年前、彼女が16の誕生日を迎えたとき以来だろうか。 久しぶりに見た彼女は、我が妹ながらますます綺麗になったと思う。 西洋文化に魅了された両親の趣味もあるが、レースをふんだんにあしらった洋服を着た彼女は、まるで和製のフランス人形のように美しかった。 腰まで真っすぐと伸びた黒髪を揺らし、ゆっくりと自分に向かって歩み寄って来る様に、思わず見惚れてしまうほどにーーーー。
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