第三世 数年の時を得て、現世で二人は巡り逢う

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 キャンパス内で新入生の道案内をしていた星野衛-ほしのまもる-(21)は、木が生い茂った隙間から姿を現した晁光を見つけると手招きして声を上げる。 「日向ー!! こっちー!!」  衛の声に気付き、晁光は片手を掲げ返事を返すと小走りして行く。  自分の目の前に足を止めた晁光を肘で小突くと、衛は呆れた顔をした。 「お前何処行ってたんだよぉ?」 「悪い。ちょっとね」 「すーぐどっか居なくなるんだからぁ。いつも何処で何してんだか」 「…………」  衛の言葉に、晁光は苦笑いすると目を伏せた。 時折、一人であのセイヨウサンザシの花を観に行っていることは彼は知らない。 別にバレてもいいのだが、何の為にと聞かれたら上手く受け答えできる自信がなかった。 自分自身でさえ、なぜあの花が気になるのか分からないのだから。 ただ、無性にあの場所に行きたくなるときがある。 赤い花を眺め、手で触れ、そのときに感じる気持ちに浸る。 それが唯一、自分本来の姿でいられるときのような気がしていた。
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