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集団の中に割って入って行った衛は、女の娘達の気を引こうと必死だ。
「あの……道に迷っちゃって」
「何処行きたいのぉ?」
普段なら絶対出さないような甘ったれた声で話しかけている衛を余所に、晁光は周りを見渡すと一人、集団から外れた青年に目を止めた。
「?」
男性……には間違いないだろうが、周りの学生と比べ彼の周りには独特な雰囲気が漂っていた。
まるで日本人形のような落ちついた顔立ちの中、二重まぶたが目立つ瞳は何かを悟ったような深い黒に染まっている。
時折、亜麻色に染めただろう髪が風でなびき、それを邪魔そうに掻き上げる仕草に、思わず目を奪われた。
『綺麗だ』と……そんな言葉が自然と脳裏に思い浮かぶ。
そんな彼の姿に見惚れていた晁光だったが、困った顔をして辺りを見渡していることに気付き、我に返ると近付いて行く。
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