第三世 数年の時を得て、現世で二人は巡り逢う

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「何か困りごと?」 「えっ? あっ……」 驚いたように目を丸くした彼の反応が、見た目と随分ギャップがあるなと内心ほくそ笑みながら晁光は笑顔で問いかけた。 「新入生だよね?」 「はい。そうですけどぉ……」 「どうしたの?」  少し腰を屈め優しい瞳を向けてくる晁光に、浅葉柳-あさばやなぎ-(18)は安堵の笑みを浮かべると、そっと晁光に耳打ちした。 「あの……トイレって何処ですか?」  恥ずかしそうに耳を真っ赤に染めて俯いてしまった柳に、晁光は一瞬呆気に取られるも、初々しい新入生の反応に笑みを浮かべると校舎へと向かって歩き出す。 「……あぁ。こっち来て」 「すいませんっ」 途端、満面の笑みを浮かべ自分の後を着いて来る柳の姿に『可愛いな』と思いながら晁光はほくそ笑んだ。
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