第三世 数年の時を得て、現世で二人は巡り逢う

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 校舎内の男子トイレの前の廊下では、晁光が壁に背をもたれながら、用を足している柳の帰りを待っていた。  柳は安堵した表情を浮かべながらトイレから出ると、晁光の姿を見つけ濡れた手をハンカチで脱ぐ居たながら近付いて行く。 「ありがとうございました。お陰で助かりましたぁ」  穏やかな笑顔を向ける柳を、晁光は愉快そうに笑う。 「どういたしまして」 「緊張すると、やたら喉渇いちゃって朝から水分取りまくってたもんだから」 照れ臭そうに言い訳する柳に微笑みながら、晁光は廊下を歩きながらデニムのポケットに手を突っ込んだ。 「飴でも舐めとくといいよ。少しは潤うだろ?」  晁光に着いて歩き出した柳は、不意に差し出された飴玉に目をぱちくりさせると、感心したようにそれを受け取る。 「あぁ、なるほどっ」
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