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数日後、とある居酒屋で新入生の親睦会が行われた。
大勢の新入生に入り交じり衛や他の3年生達が楽しく交流を深める中、遅れて来た晁光は辺りを見渡し、ふと目が止まった柳の姿に目を細める。
他の新入生達が既に周りに打ち解けている中、柳は席の端で一人、静かに自分の世界に浸っていた。
時たま周りに話しを振られてはいるが、軽く受け答えが済むと、再び自分の世界に戻って行く。
そんな姿に引かれるように自然と足が進んで行く。
人の波を掻き分け、ようやく柳の元へ辿り着くと、まだ自分の存在に気付いていない彼にそっと声をかけた。
「浅葉君」
テーブルの一点を見詰めウーロン茶が入ったジョッキを傾けていた柳は、晁光の声に弾かれたように顔を上げると口元から笑みを零す。
「あっ、日向先輩」
さっきまでの大人びた雰囲気とは違う、無防備な子供のような柳の笑顔に、晁光は釣られて微笑むと遠慮がちに空いている彼の隣に視線を落とした。
「隣……いいかな?」
ビールジョッキ片手に遠慮がちに問いかけてきた晁光に、柳は笑顔を返すと自分の隣を指し示す。
「どうぞっ」
「ありがとう」
晁光は腰を下ろすと、自分のビールジョッキに、ちらちら視線を送りながらウーロン茶を飲んでいる柳にふっと笑みを浮かべる。
「浅葉君はアルコール、ダメな人?」
まるで自分の心を見透かしたかのように問いかけてきた晁光に、柳は大きく肩を震わせると気まずそうに目を伏せた。
「いやっ、あのっ……まだ未成年ですからっ」
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