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まるで叱られた子供のように慌てて取り繕う柳の姿が、可愛いと思う自分は少し可笑しいだろうか。
そう思いながら晁光は顔をほころばせると、柳へと救いの手を差し伸べる。
「そうだった。野暮なこと聞いたね」
自分がアルコールの味を知っていることに気付きながらも、深く追求せず静かにジョッキを傾けている晁光の姿が、やけに大人に見えた。
実際、自分よりは年上なのだから当たり前なのだが、彼の傍に居ると安心する自分が居る事に気付く。
思わず晁光の横顔をじっと見詰めてしまっていたが、ふいに視線が重なり、柳は慌てて目を逸らすとモジモジしだす。
「……まぁ……少しぐらいなら?」
その言葉に、晁光はふっと笑みを浮かべると飲み放題のメニュー表を手に取り彼に差し出した。
「積極的に勧める訳じゃないけど……これメニュー」
「じゃあ……これにしようかな」
おずおずと柳が指差した女性向けの甘いカクテルの写真に思わず顔がほころぶも、あえてそこは突っ込まず、素知らぬ顔をして晁光は立ち上がる。
「俺が頼むよ」
「いえっ、先輩にそんな雑用っ……」
慌てて腰を浮かせた柳を手で制すると晁光は笑みを浮かべる。
「今日は君たちが主役だから。俺の仕事取らないで」
「あー……じゃあ……お願いします」
申し訳なさそうに苦笑いした柳の姿に目を細めると、晁光は店員に向かって声をかけた。
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